のどの異常・声がれ

咽喉痛

咽喉の詰まり感

声がれ

失語症

いびき

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①咽喉が詰まるー肝虚証、腎虚証、肺虚肝実証。

②咽喉が痛いー肺虚証、脾虚証、腎虚証。

③声が嗄れる、声が出にくいー腎虚証。

④咽喉に痰が引っかかるー肺虚肝実証。

⑤いびきが大きいー脾虚熱証、腎虚熱証。

【随伴症状】

①急に咽喉が詰まるー腎虚熱証。

②咽喉が詰まる感じと動悸があるー腎虚熱証。

③詰まる感じがして憂鬱ー肝虚寒証、肺虚肝実証。

④咽喉の自発痛ー陽明経から肺経または心包経の熱。

⑤飲み込んだときのみ喉痛ー腎虚寒証。

⑥咽喉の自発痛ー腎虚証、肺虚証、腎虚証。

⑦咽喉が腫れているー陽明経、肺経、心包経などの熱。

⑧声が嗄れ喋ると痛むー腎虚証。

 

[2]望診と聞診

①腎虚寒証の咽喉痛は悪寒があって顔が青白い。

②脾虚熱証の咽喉痛は顔が赤い。または眼が充血している。

2,証の決定

肝虚寒証

[1]病証

①咽喉の詰まり感があり、咳払いしてもすっきりしない。

②心配事があり、気持ちが消極的になっている。

③胸が苦しく、時に動悸がする。

④小便の回数が多く便秘の場合がある。出ても軟便。

⑤食欲はないが食べられる。

 

[2]切診

【切経】

①肝経、胆経、三焦経(上腕部)に圧痛が出やすい。

【腹部】

①水分から巨闕にかけて動悸がある場合は腎気が虚して上部に昇っているためである。

②上腹部全体が緊張している。

③腹部全体の表面に水が多い。

④胸の腎経に圧痛がある。

【背診】

①膈兪周辺が少し隆起して硬い。

 

[3]脈診

①全体に弱。時に数が加わる。

②咽喉部の詰まり感は腎虚が主になっているので左尺中は重按で虚。

③気が昇っているため右寸口は力があることがある。

脾虚熱証

[1]病証

①肺虚熱証から始まるため悪寒、発熱がある。

②咽喉部の腫痛、嚥下困難、発声困難がある。

③食欲減退、下痢、便秘、口渇がある。悪寒が少なくなると脾虚熱証で陽明経の熱である。

④通常は陽明経の熱だが飲食ができないほど腫れた場合は肺経の熱になっている。

⑤5日以上解熱せず悪寒がない場合は肺経の熱になっていることがある。

 

[2]切診

【切経】

①陽明経や肺経など熱が停滞していると思われる経絡を切経する。

②肺経熱になると曲池と尺沢の間から少し下がった付近に硬結が現れる。

【腹診】

①脾虚は心下部に抵抗が確認できる。

②肺経熱は中府を結ぶ線上に熱感がある。

【背診】

①肺経熱は肺兪周辺に熱感がある。

 

[3]脈診

①肺虚熱証なら浮、数、実。

②脾虚なら全体に弦でやや浮。熱があれば数。熱がなければ沈、弦。

③脾虚であれば重按で左寸口と右関上が虚。

④陽明経の熱があれば右寸口と関上は軽按で強く感じる。

⑤右寸口が沈で力があれば肺経の熱である。

腎虚証

[1]病証

【咽喉の詰まり感】

①下腹から気が衝き上がってきて、動悸がすると同時に咽喉が詰まった感じになるのは熱証である。

②冷えのぼせで頭で動悸を感じるのは熱証である。

③腹痛のない下痢は熱証である。

④肺虚肝実証になると気鬱、肩こり、便秘などがある。

【咽喉痛】

①透明の小便が多量に出て手足が冷え、下痢の傾向があるのは寒証である。

②手が煩熱しイライラして気持ちが落ち着かない場合は心包経の熱である。

③足まで煩熱するのは腎虚熱証である。

【嗄声・失音・いびき】

①腎虚熱証はいびきが大きいことがある。肥満、手足、足裏の煩熱、腰痛、口渇、夜間排尿、食欲旺盛などの病証が見られる。

②腰痛、手足の冷え、下痢または冷えて便秘、小便が多い場合は寒証である。

 

[2]切診

【切経】

①咽喉痛がある場合は照海、太谿などに圧痛がある。

②胸の腎経に圧痛がある。

【腹診】

①熱証は少腹不仁があり胃経の引きつりが目立つ。

②寒証だと下腹部全体が軟弱。

③咽喉痛の場合は水分上部で動悸を感じることがある。

④肺虚肝実証だと右脇下硬と下腹部の抵抗、圧痛がある。

【背診】

①腎兪周辺が硬くなっている。

 

[3]脈診

①咽喉痛の初期は沈、細、弱。悪寒があれば数も加わる。熱が多くなるとやや大きくなるが浮脈にはならない。

②熱があっても脈が浮いていないかぎり腎虚寒証である。

③心包経の熱になると全体に弦、数で重按して左寸口のみ虚している。

④咽喉の詰まり感の時に全体に大きくて重按して虚の場合は腎虚熱証である。

⑤加えて左関上の実があれば肺虚肝実証である。

⑥全体に軟脈、やや浮で細、重按で虚の脈は腎虚寒証である。

3,治療

[1]本治法の治療穴

【肝虚証】

①太谿、太衝の補法。気を巡らせる目的で復溜、中封を併用。

【脾虚証】

①肺虚で太陽経の熱なら太淵か経渠を補い金門か少沢を瀉す。陽明経の熱なら商陽か三間の瀉法を加える。

②脾虚で陽明経の熱なら陰白、間使、商丘を補い、商陽、三間、合谷、豊隆などを瀉法。

③肺熱なら間使、商丘、魚際の補法。少商、尺沢の瀉法。

【腎虚証】

①咽喉痛の初期なら太谿、神門の補法。

②夜になり痛みが激しくなり悪寒する場合は然谷、大鐘、照海、経渠などの補法。

③悪寒がなくなり手の煩熱があれば神門、通里、魚際の補法。労宮、関衝の瀉法。

④腎虚熱証なら湧泉、然谷、陰谷の補法。

⑤咽喉部の詰まり感には尺沢、復溜の補法が主になる。

⑥いびきが大きい場合は腎虚でも脾虚でも陽明経の瀉法が必須。足三里、手三里、解谿など。

⑦声が出ないときは列缺、照海の補法。

⑧肺虚肝実証なら基本穴の他に行間、曲泉の瀉法。

[2]本治法補助穴

【腹部】

①関元、石門、気海、中脘、水分、巨闕、天枢、期門、不容。

②咽喉の詰まり感には関元、石門。

【背部】

①風府、風池、天柱、身柱、大椎、肺兪、膈兪、腎兪など。

[3]標治法の治療穴

【頸部および胸部】

①中府、缺盆、天突、霊泉、天容、気舎、水突、人迎など虚実に応じて使い分ける。

②咽喉痛には天突、人迎。