膝関節痛・リウマチ

膝関節痛

リウマチ

痛風

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①関節が痛んで眠れない。

②関節が痛んで歩行困難。

③関節が腫れている。

④正座ができない。

⑤膝が変形している。

【随伴症状】

①自発痛がある場合は寒熱をしっかり判定する。

②夕方痛む場合は脾虚陽明経実熱証。

③夜痛むのは肝実証。

④朝方痛むのは脾虚寒証。

⑤起床時に動かしにくく、少し動かして夕方になると楽になるのは肝虚証。

⑥運動痛のみは肝実証が多い。

⑦関節が腫れている場合は脾虚証。

⑧腫れがなく、痛みだけだと肝実証か肝虚証。

⑨全身が冷えて関節が痛む場合は脾虚寒証。

⑩変形性膝関節症は肝虚熱証で肺経熱である。

[2]望診と聞診

①皮膚が張りつめた緊張ー脾虚陽明経実熱証。

②発赤があるー脾虚陽明経実熱証か肝実証。

③腫れているが皴があるー脾虚胃虚熱証。

④関節のみが太くて変形ー肝虚熱証で心肺熱。

⑤腫れているが発赤はなくぶよぶよー脾虚寒証。

⑥肥満して下腿部に浮腫ー腎虚熱証。

⑦浮腫はないー肝実証。

⑧関節部分が乾燥しているー脾虚寒証。

[3]悪化の要因

①天気が悪くなると痛むのは脾虚証。

②夜になると痛むのは肝実証。

③起床時に痛み、午後から楽になるのは肝虚熱証。

④夕方に足が浮腫むのは腎虚熱証。

⑤早朝の冷えで痛むのは脾虚寒証。

[4]部位の確認

①浮腫を按圧してすぐに戻るのは実腫である。

②浮腫を按圧してすぐに戻らないのは虚腫である。

③浮腫に熱感があり、強く圧すと冷えを感じるのは寒証である。

④浮腫に熱感があり、強く圧すとさらに熱く感じるのは熱証である。

⑤下腿全体に浮腫があり指で押すと陥下するのは腎虚熱証である。

⑥曲泉や委中に圧痛があり浮腫がなければ肝実証である。

2,証の決定

脾虚熱証

[1]病証

①午後から発熱し、痛みが増す場合は脾虚陽明経実熱証である。

②浮腫は実腫で自発痛がある。

③実熱証が慢性化すると熱感が少なくなり実腫でなくなることがある。

④関節痛とともに

食欲の変動、胃弱、便秘、下痢、腹痛などの胃腸病証があれば脾虚胃虚熱証である。

⑤脾虚胃虚熱証は手足の倦怠感、疲労、動くと動悸、口渇などがある。

 

[2]切診

【切経】

①陽明経実熱証は腫れている部分や熱のある部分を按圧すると痛みが増す。

②胃虚熱証は按圧してもそれほど痛みはない。

③脾虚胃虚熱証は心包経と脾経に圧痛が現れている場合が多い。

【腹診】

①脾虚胃虚熱証は中脘に抵抗がある。これは水滞を示す。

【背診】

①胃虚熱証は脾兪、胃兪、三焦兪に膨隆があり按圧すると気持ちよい。

 

[3]脈診

①陽明経実熱証の初期は全体に浮、実、数、少し経過すると浮、実、慢性になると沈、実になる。沈、実になると関節の熱は少ない。

②左寸口、右関上が虚。

脾虚寒証

[1]病証

①関節はぶよぶよした腫れがあり変形している。

②触診で熱感があるが、強く押すと冷感がある。

③全身の関節に影響が及んでいることがある。

④自発痛は朝方に強い。

⑤自汗、息切れ、小便が少ない、もしくは小便が多く便秘。

⑥大きな音で響いて痛む。

 

[2]切診

【切経】

①心包経、脾経に圧痛がある。

②腫れを按圧すると痛む。

【腹診】

①全体に軟弱でぶよぶよしているが巨闕に抵抗があることがある。

【背診】

①小腸兪周辺に浮腫がある。

 

[3]脈診

①全体に浮、濇、数で虚、あるいは弱で数、軟で数。

②重按で左寸口と左尺中、右関上が虚。

肝虚熱証

[1]病証

①関節が変形して筋肉の拘攣がある。

②関節以外の部分は痩せている。

③食欲旺盛。

④大便小便共にすっきり出ないことがある。

⑤起床時に動かしにくく、午後から楽になる。

 

[2]切診

【切経】

①肝経、胆経、肺経または心経に圧痛がある。

②関節部分を按圧しても痛みを感じにくい。

③膝眼穴を主にして陰陵泉、血海、梁丘などに硬結がある。

【腹診】

①左脇下硬がある。

②胸に熱感がある。

【背診】

①腎兪、志室から下に緊張や抵抗がある。

 

[3]脈診

①左関上、尺中が虚。

②右寸口や左寸口が沈、弦、実または沈、細、実。

③右寸口が浮いているほど大腸経に近い熱である。

肝実証

[1]病証

①委中、曲泉周辺が引きつり痛む。

②運動痛が主である。

③浮腫はない。

④曲泉周辺に細絡が出ていることがある。

⑤痛風があれば痛みのために不眠になり、患部は発赤、腫脹している。

 

[2]切診

【切経】

①痛む部分を按圧すると痛みがある。

【腹診】

①右脇下硬がある。

②下腹部に瘀血性の抵抗、圧痛がある。

【背診】

①膈兪、肝兪周辺が隆起して硬い。

②瘀血があると仙骨部に硬結が多い。

 

[3]脈診

①脾虚肝実証は左寸口と右関上が虚。

②肺虚肝実証は左尺中が虚。

③左関上は実。

④瘀血がある場合は沈、濇、細、実、もしくは沈、弦、実。肝実熱があれば数が加わる。

腎虚熱証

[1]病証

①肥満していて色が白く汗かきである。

②表に水があるため暑がりで寒がりである。

③食欲はあり、大便は快通、小便は少ない。

④夕方になると下肢に浮腫が出る。

⑤全体に水が多いため浮腫が分かりにくい。

⑥汗で冷えているため表面に熱感はない。

 

[2]切診

【切経】

①肺経、腎経に圧痛がある。

【腹診】

①腹部全体が膨満して抵抗が少ない。

【背診】

①大腸兪から仙骨にかけて水滞がある。

 

[3]脈診

①水が多いため、沈、弦。

②左の尺中と右の寸口が虚。

3,治療

[1]本治法の治療穴

【脾虚太陽経実熱証】

①労宮、太都の補法。養老の瀉法。

【脾虚陽明経実熱証】

①労宮、太都の補法。熱が多ければ豊隆、解谿、居髎の瀉法。

【脾虚胃虚熱証】

①大陵、太白、陰陵泉、足三里、衝陽の補法。虚労が主であれば三陰交併用。

【脾虚寒証】

①大陵、太白、衝陽、腕骨、太谿、陽池の補法。

【肝虚心肺熱証】

①陰谷、曲泉、中封、復溜の補法。

②心熱があれば然谷併用。

③肺熱があれば魚際の補法と孔最の瀉法。

【肝実証】

①脾虚肝実証も肺虚肝実証も基本穴を補法後、曲泉と委中の瀉法。瀉法には刺絡がよい。

②肝実熱があれば足臨泣も加える。

③膝への置鍼と土穴の太衝に置鍼。

【腎虚熱証】

①尺沢、復溜、陰陵泉、交信の補法。

[2]本治法補助穴

【腹部】

①中脘、巨闕、天枢、関元、水分など。

②脾虚寒証は膻中、関元、石門、気海、陰交などに透熱灸。

【背部】

①大杼、厥陰兪、膈兪、肝兪、胆兪、脾兪、胃兪、三焦兪、環跳など。

[3]標治法治療穴

【患部】

①実熱は腫れている部分に置鍼。その後瀉の散鍼と知熱灸。

②虚熱は腫れている部分に置鍼。その後補の散鍼。知熱灸。

③虚熱と血虚であれば深く置鍼。変形している部分の硬結に水平に深刺。

④肝実であれば痛む部分を刺絡。

⑤寒証は接触鍼または知熱灸。

⑥下腿の浮腫は知熱灸。

⑦犢鼻、膝眼、陰陵泉、足三里、陽陵泉、梁丘、血海、殷門、膝蓋骨周辺の圧痛、浮腫に置鍼。