めまい

貧血症

高血圧症

低血圧症

メニエール病

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①目が回って起きていられない。

②のぼせて頭がくらくらする。

③フラフラ、ふわふわして歩きにくい。

④全身の力が抜けて歩きにくい。

⑤乗り物酔いしやすい。

【随伴症状】

①頸を横に振ったり、頭を動かすと眩暈がして静止していると起こらないのは肝虚熱証である。

②動かなくても眩暈がして、動くと吐き気または嘔吐があるものは脾虚胃虚熱証。脾虚の眩暈には頭重がある。

③眩暈がするときに全身が冷えて元気がなく、低血圧や貧血があれば肝虚寒証か脾虚寒証である。このような時は食欲もない。

④眩暈はするが歩けないほどではなく、フラフラ感が主で、肩凝り気鬱、便秘があれば肺虚肝実証である。

⑤眩暈というよりものぼせ感が主で血圧が高いのは腎虚熱証である。

[2]原因・経過・既往症

①肩が凝るような仕事で過労ー肝虚熱証

②以前にも眩暈を起こしたことがあるー肝虚熱証

③耳の病気になったことがあるー肝虚熱証

④更年期による眩暈とのぼせ感ー肝虚熱証

⑤何らかの病気で出血した後ー肝虚寒証

⑥産後の眩暈ー肝虚熱証か肝虚寒証

⑦暴飲暴食後の眩暈ー脾虚熱証

⑧胃腸が弱くて乗り物酔いしやすいー脾虚熱証か脾虚寒証

⑨もともと血圧が低い。貧血があるー肝虚寒証か脾虚寒証

⑩不眠、肩凝りがあるー肺虚肝実証

⑪発汗、下痢、嘔吐後からー脾虚寒証

⑫以前から血圧が高いー腎虚熱証

2,証の決定

肝虚証

[1]病証

【肝虚熱証】

①寝返りしたり頸を動かすと目が回る。

②フラフラして歩きにくい。

③更年期の症状とともに発症。

④上焦に熱が多くなるために血圧が高くなっていることがある。

⑤食欲はある。

⑥便秘していることが多い。

⑦イライラして不眠。

【肝虚寒証】

①ぐるぐる回ることもある。

②立ち眩みが主になっていることもある。貧血や低血圧。

③手足が冷えて食欲がなくなる。食べたら食べられる。

④耳鳴りや難聴がある。

⑤気が小さくなって人に会うのも嫌になっている。

⑥のぼせて頭が重くてはっきりしない。

⑦歩くとふらつく。

 

[2]切診

【切経】

①目が回るという状態の時は必ず胆経と三焦経を切経する。

【腹診】

①熱証には胸に熱感がある。

②熱証には左の脇下硬がある。

③熱証のときは臍の左側に動悸があり、それが胸にまで昇ってきてフラフラする。

④寒証は側腹部が緊張している。

⑤寒証は上腹部全体が薄く緊張しているが、眩暈があると巨闕周辺が詰まっている。

⑥熱証、寒証とも鼠径部に圧痛がある。

⑦寒証は回盲部に圧痛がある。

【背診】

①上部の督脈上や脊際に圧痛が出ている。

②肩甲骨内側から頸にかけて凝っている。

③腸骨稜上縁の圧痛は熱証に多い。

 

[3]脈診

【肝虚熱証】

①弦で大きく硬い。

②左右の寸口脈は沈、弦で有力。

【肝虚寒証】

①全体に沈、緊、細である。

②全体に芤、大のことがある。

脾虚証

[1]病証

【脾虚胃虚熱証】

①小便が少なくて腹痛、下痢がある。

②口渇がある。眩暈がない時は食欲がある。

③眩暈が起こると吐き気、嘔吐、頭重が起こる。嘔吐すると楽になる。

④寝ていても目が回る。

⑤乗り物酔いになりやすい。

⑥暴飲暴食後になりやすい。

【脾虚寒証】

①小便が少なく、勢いよく出ない。

②少食で下痢しやすい。

③手足も全身も冷えて脱力。

④眩暈が起こっている時は起き上がれない。

⑤口渇がない。

 

[2]切診

【切経】

①心包経、脾経、胃経に圧痛があるが、眩暈があるときは胆経にも圧痛が出ている。

②寒証になると脾経は陥下し、胆経を按圧すると気持ちが良い。

③寒証だと下肢の膀胱経に圧痛がある。

【腹診】

①中脘の部に抵抗があり、それが巨闕にまで及んでいる。痰飲が多いことを示している。

②寒証のときは腹部全体が軟弱なことがある。

【背診】

①脾兪、胃兪が膨隆しているが、按圧すると虚している。

 

[3]脈診

①熱証の時は沈、弦で力がある。痰飲の停滞を示している。

②重按で左寸口と右関上が虚し、左関上は軽按で胆の脈は虚し、重按で弦である。また左尺中は少し按圧すると脈が強く感じる。

③寒証のときは全体に弱脈である。

④寒証の時は左尺中も右関上も虚している。

腎虚証

[1]病証

【肺虚肝実証】

①不眠、肩凝り、気鬱がある。

②便秘しやすい。

【腎虚熱証】

①のぼせてフラフラして歩きにくい。

②頭がゆらゆら揺れる感じがする。

③急に立ち上がるとフラフラして動悸がする。

④下痢するが腹痛はない。

⑤眩暈がなければ食欲はある。

⑥小便回数が多い。

⑦腰痛がある。

 

[2]切診

【切経】

①腎経、脾経、膀胱経に圧痛が出ている。

②肝実証があると曲泉から上の肝経と胆経に圧痛がある。

【腹診】

①肝実があるときは右の脇下硬があり、鼠径上部に圧痛がある。

②肝実があると臍傍下や下腹部に瘀血性の抵抗、圧痛が現れる。

③腎虚が主になると腹筋が全体に痩せて張り、按圧すると硬い。しかし、臍下の任脈だけは虚している。

④恥骨上部に圧痛抵抗がある。

⑤心下の巨闕の部分に詰まり感がある。

【背診】

①肝実があると大腸兪から仙骨部分にかけて硬く、硬結もある。

②腎兪、志室周辺が硬く、時に圧痛がある。

 

[3]脈診

①肺虚肝実証の脈は左尺中が虚して左関上が沈、弦、実である。

②腎虚熱証の時は、全体に強い感じで弦または滑、重按すると左尺中が虚、左寸口は有力。沈んで硬い脈は血圧が高い。

3,治療

[1]本治法の治療穴

【肝虚熱証】

①陰谷、曲泉を補法。肺熱があれば魚際も補う。

【肝虚寒証】

①太谿、太衝を補法。隠白、丘墟、足臨泣、飛陽などを併用。

【脾虚熱証】

①大陵、太白を補法。太都、腕骨、崑崙、束骨、申脈などを併用。

②陽輔か丘墟を補う。

【脾虚寒証】

①この証は腎虚寒証もあるから、まず太谿を補う。次に衝陽、陽池、丘墟などを補う。

【肺虚肝実証】

①陰谷、然谷を補法。

②曲泉か行間を瀉法。

【腎虚熱証】

①尺沢、復溜を補法。熱が多ければ然谷を補法。

[2]本治法補助穴

【腹部】

①膻中、巨闕、中脘、梁門、章門、関元。

②痰飲がある場合は中脘、巨闕、梁門。

③寒証であれば膻中、章門、関元。

④全て切皮程度の置鍼。寒証であれば金鍼接触鍼。

【背部】

①風府、風門、陶道、風池、天柱、完骨、肩井、厥陰兪、肝兪、脾兪などを用いるが、虚実寒熱の反応がなければ用いても効果はない。

②痰飲が多い時は脾兪に透熱灸。

③脊際の圧痛や硬結に置鍼。