甲状腺の異常

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能低下症

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①動悸がしやすい。

②疲れやすい。

③手が震える。

④動作がゆっくりとなり、物忘れが激しくなった。

【随伴症状】

①甲状腺の動悸は動いたときに感じるものが多い。

②食欲亢進、異常発汗、体重減少。

③見た感じが元気そうなのに疲れる場合は機能亢進。

④見るからに元気がない場合は機能低下。

⑤手の震えは甲状腺機能亢進症の一つの病証。

[2]望診と聞診

①薄い体毛が多いー肺虚体質。

②眼が突出しているー腎虚熱証。

③以上に汗が出やすいー腎虚熱証。

④手を上げさせると震えるー腎虚熱証。

⑤咽喉部が大きくなっているー腎虚熱証。

⑥体毛が薄くなるー脾虚寒証。

⑦話し方が遅いー脾虚寒証。

⑧青白い乾燥肌ー脾虚寒証。

⑨眼瞼や四肢に浮腫があるー脾虚寒証。

[3]悪化の原因

①過労で悪化する。

②機能亢進は夏に悪化、機能低下は冬に悪化しやすい。

[4]部位の確認

①機能亢進は甲状腺が大きくなっていることを確認する。

2,証の決定

腎虚熱証

[1]病証

①目が突出している。

②食欲旺盛なのに痩せる。

③下痢しやすい。

④精神的に不安定。

⑤興奮しやすく汗が出やすい。

⑥少しの運動で動悸、息切れがする。

⑦手足や身体は煩熱する。

 

[2]切診

【切経】

①腎経に気持ちのよい圧痛がある。

【腹診】

①少腹不仁、胸に熱感がある。

【背診】

①腎兪に圧痛。あるいは心兪に自発痛。

 

[3]脈診

①大きく弦、滑で数。

脾虚寒証

[1]病証

①血が少なく、出血しやすいため脱力感、手足の冷え、低体温がある。

②皮膚が青白く、乾燥して荒れている。

③動作や話し方が遅い。

④通常の脾虚寒証は下痢になるが、この証は血虚があるので便秘になる。

⑤食欲はない。

 

[2]切診

【切経】

①脾経に圧痛がある。

【腹診】

①上腹部全体が薄く緊張している。

【背診】

①脾兪、胃兪周辺に圧痛がある。

 

[3]脈診

①沈、細、弱で遅脈がある。

3,治療

[1]本治法の治療穴

【腎虚熱証】

①陰谷、然谷を補法。

②心熱が多ければ郄門を瀉法。

【脾虚寒証】

①大陵、太白の補法。三陰交を併用。

[2]本治法補助穴

①腎虚熱証であれば腎兪、志室、関元の補法。

②脾虚寒証であれば、中脘、章門、脾兪、胃兪、三焦兪を補う。