前立腺肥大・尿失禁

前立腺肥大

前立腺炎

尿失禁

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①小便が漏れて困る。

②夜間に何回も排尿する。

③小便が勢いよく出ない。

④会陰部や肛門が痛い。

⑤精液に血液が混じる。

【随伴症状】

①回数も量も多い場合は腎虚寒証が多いが、一時的であれば脾虚寒証や肺虚寒証もある。

②回数は多いが、出る量が少ない時は肝虚熱証や腎虚熱証である。

③前立腺肥大は肝虚熱証または腎虚熱証である。

④精液に血液が混じるときは腫瘍の可能性がある。

2,証の決定

肝虚熱証と腎虚熱証

[1]病証

①肝虚熱証と腎虚熱証は最終的に脈診で判断する。

②頻尿だが量は少ない。

③夜間排尿は腎虚熱証が多い。

④排尿の遅延、尿線が細い、排尿の勢いが弱いのは肝虚熱証が多い。

⑤残尿感、排尿末期痛は肝虚熱証が多い。

⑥射精痛、早漏、血精液症は肝虚熱証に多い。

⑦勃起不全、性欲減退、疲労感は腎虚熱証に多い。

 

[2]切診

【切経】

①腎経と肝経に圧痛がある。特に蠡溝、曲泉の圧痛が顕著である。

【腹診】

①曲骨、中極など恥骨上部に抵抗圧痛がある。

【背診】

①八髎穴やその周辺の穴に圧痛抵抗がある。

 

[3]脈診

①全体に沈、弦でやや数。

②沈んで硬いほど治りにくい。

肺虚と脾虚の寒証~腎虚寒証

[1]病証

①排尿の回数も量も多いが、時に勢いが弱くて少ないこともある。

②全身が冷える。悪化すると残尿感や尿失禁が現れる。

③失禁があれば腎虚寒証である。

 

[2]切診

【切経】

①肺経、膀胱経に圧痛が出ている。

【腹診】

①腹部全体が軟弱で、時に下腹の力が抜けている。

 

[3]脈診

①沈、細で遅、重按すると虚している。

3,治療

[1]本治法の治療穴

【肝虚熱証】

①陰谷、曲泉に太衝、蠡溝を用いる。

【腎虚熱証】

①尺沢、復溜、陰谷、湧泉の補法。陰陵泉、足三里、崑崙、飛陽を用いる。

【肺虚寒証】

①太淵、太白、列缺、公孫の補法。尺沢を併用。

【脾虚寒証】

①大陵、太白、内関、公孫の補法。陽池を併用。

【腎虚寒証】

①太淵、経渠、太谿、復溜の補法。

[2]本治法補助穴

【腹部】

①曲骨、中極、関元、石門、気海など。

【背部】

①腎兪、膀胱兪、白環兪、腰兪、会陽、上髎、次髎、小腸兪、三焦兪、京門など。

[3]標治法の治療穴

①排尿困難は池機、三陰交、絶骨の透熱灸。

②前立腺肥大は中極、風市、殷門、委中、承扶の透熱灸。

③尿閉は三焦兪、小腸兪、中極の透熱灸。

④前立腺の不快感は太敦、太衝、蠡溝、膏肓、中極の透熱灸。

⑤前立腺の肥大、炎症は長強、腰兪、会陽の灸頭鍼。

⑥小便頻数は中極、関元、石門、腎兪の多壮灸。

⑦失禁は関元、腎兪、膀胱兪、白環兪の灸頭鍼。