不眠・嗜眠

1,診察

[1]随伴症状

①眠った気がしない:肝虚証

②夢が多い:肝虚証

③中途覚醒:上焦の熱

④まったく眠れない:肝虚寒証か脾虚肝実証

⑤入眠障害:脾虚証

⑥早朝覚醒:腎虚熱証

⑦昼間でも眠い:脾虚寒証か腎虚寒証

⑧眠れないが横になっていることが多い:肺虚寒証

⑨眠らなくても平気:脾虚胃実熱証

[2]原因・経過・既往症

①産後や手術後の不眠は血虚。肝虚証が多い。

②お酒で陽気が盛んになり上焦に熱が多くなると眠れない。

③運動して不眠になるのは血虚。

④胃腸が弱い体質は嗜眠になりやすい。

2,証の決定

肝虚証

[1]病証

【肝虚熱証】

①肝虚体質者は完璧主義であるため気分が落ち着かない。イライラして不眠になる。眠りながら仕事のことを考えたり仕事の夢を見たりする。

②肝虚の熱が上焦へ行き、夜間に目が覚めることがある。

【肝虚寒証】

①産後、手術後に血が少なくなり眠れなくなる。

②神経質で弱気になっていることが多い。

 

[2]切診

【切経】

①肝経、胆経、陰蹻脈、陽蹻脈に圧痛がある。

【腹診】

①胆の気が循環していないため側脇部が冷えている。

②夜中に目が覚める場合は胸に熱がある。

【背診】

①督脈上部に圧痛がある。

 

[3]脈診

①肝虚熱証は弦、やや数。

②肝虚寒証は弱、数。 

脾虚証

[1]病証

【脾虚胃実熱証】

①眠らなくても平気な場合は胃の陽気が病的に多い。

②食欲旺盛、活動的、下痢しても平気。

【脾虚胃虚熱証】

①寝つきが悪い。朝は起きにくい。

②空腹になりすぎると眠れない。

③夜中に食べると寝られるが、朝は胃が不調になる。

【脾虚寒証】

①冷飲食で寝つきが悪くなる。

②寝つきが悪く朝も起きにくい。

③食後に眠くなる。

【脾虚肝実証】

①まったく眠れないことがある。

②眠れないことを非常に気にする。

③家庭や職場に不満があるのに口に出して言えないため不眠になる。

 

[2]切診

【切経】

①胃実熱証は圧痛がない。

②胃虚熱証は脾経に圧痛がある。

③脾虚寒証は圧痛が出にくいが、衝陽に圧痛が出ることがある。

④脾虚肝実証は三陰交、曲泉、胆経全体に圧痛がある。

 【腹診】

①胃実熱証は腹部全体が膨隆して硬い。

②胃虚熱証は腹直筋が引きつり、中脘に抵抗がある。

③寒証は中脘から巨闕に抵抗がある。

④肝実証があれば右の脇下硬と下腹部に瘀血性の抵抗と圧痛がある。

 【背診】

①胃実熱証は背部全体が膨隆して硬い。

②胃虚熱証と寒証は脾兪、胃兪、三焦兪が陥下している。

③肝実証は天柱、風池、完骨の凝りが強い。

 

[3]脈診

①胃実熱証は大、実、数。

②胃虚熱証は弦、虚。

③寒証は弱または緩。

④肝実証は沈、弦で左関上が実。

肺虚寒証

[1]病証

①気力が無く、眠くはないが横になっていることが多い。

②声に力がなく、体が冷えやすい。

 

[2]切診

【切経】

①肺経に圧痛がある。

【腹診】

①腹部異常なし。

【背診】

①肺兪周辺の皮膚がざらつき痩せている。

 

[3]脈診

①沈、濇、短。

腎虚熱証

[1]病証

①寝つきが悪く朝早く目覚めるために睡眠時間が短い。

②夜中に目が覚めることが多い。

③昼間は眠い

 

[2]切診

【切経】

①心包経に圧痛がある。

【腹診】

①胸に熱がある。

②臍下に力がない。

【背診】

①腎兪周辺が硬い。

 

[3]脈診

①滑で大、力がある。やや数の場合が多い。

3,治療

[1]本治法補助穴

【腹部】

①中脘、上脘、帯脈、気海など

【背部】

①肺兪、厥陰兪、膈兪、肝兪、胆兪、膏肓、など

[2]標治法の治療穴

【不眠】

①側頭部の皮膚鍼、置鍼

②胆経の置鍼、三陰交の透熱灸。

③環跳灸頭鍼

④督脈上の圧痛点に置鍼、または透熱灸。

⑤腎虚証は失眠穴に透熱灸。

⑥天柱、風池、完骨周辺凝りをとる。

⑦脳戸、百会、陰蹻、神庭などに置鍼。

【嗜眠】

①脾兪、胃兪、三焦兪に透熱灸。

②高齢者の嗜眠は腎兪、命門に透熱灸。