更年期障害・冷え性

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①全身または手足が冷えるー肝虚寒証。

②腰から下が冷えるー肝虚証か肝実証。

③足首から先が冷えるー胆経の異常か肝虚熱証。

【随伴症状】

①便秘ー肝虚熱証、肝実証。

②肝虚寒証は便秘しない。

③月経中に下痢になるー肝虚寒証。

④便秘がちで月経になるとさらに便秘になるー脾虚肝実証。

⑤便秘ではないが便が硬いー肝虚熱証。

⑥便秘ではないが黒い便がでるー脾虚肝実証か肺虚肝実証。

⑦胃の調子が悪くても食べられるー肝虚熱証。

⑧食欲がなくても食べられるー肝虚寒証。

 

[2]望診と聞診

①のぼせて顔が赤いー肝虚熱証

②頬がピンク色ー肝虚寒証

③全身の色が白いー肝虚寒証。

④眼瞼内が白いー肝虚寒証。

⑤唇が荒れやすいー肝虚寒証。

⑥痩せているー肝虚寒証。

⑦顔にシミが多いー肝実証。

⑧皮膚全体の色が黒いー肝実証。

⑨舌が乾燥しているー脾虚肝実証。

⑩肥満しているー肺虚肝実証。

2,証の決定

肝虚証

[1]病証

【肝虚熱証】

①冷えてのぼせる。

②熱があるので食欲はある。

③便秘の傾向がある。

④寒熱往来があるのでカァーとのぼせてゾゥーと冷める。

【肝虚寒証】

①手足または全身が冷える。

②上焦の熱が心包経に出てきて手掌が熱くなることがある。

③のぼせて頬がピンク色になる。

④寒なので食欲がない。

⑤下痢の傾向がある。

 

[2]切診

【切経】

①肝経と胆経に圧痛がある。

【腹診】

①肝虚熱証は左脇下硬があり、胸に熱感がある。

②肝虚寒証は上腹部全体が薄く緊張し、回盲部に圧痛がある。

③いずれも鼠径上部に圧痛がある。

【背診】

①膈兪、肝兪、胆兪に圧痛硬結がある。

②肝虚寒証は会陽穴に圧痛がある。

 

[3]脈診

①肝虚熱証は弦か滑で大きく力がある。

②肝虚寒証は弱。

肝実証

[1]病証

【脾虚肝実証】

①腰から下、または全身が冷える。

②のぼせ、頭痛、肩こりがある。

③食欲があり、便秘の傾向がある。

④冷えがあるので肝虚寒証と間違えやすい。

【肺虚肝実証】

①腰から下が冷える。

②のぼせ、首肩こりがある。

③冷えを訴えるが内に熱があるため便秘傾向、食欲旺盛。

④中年以降の肥満の女性に多い。

 

[2]切診

【切経】

①曲泉より上の肝経、三陰交、血海に圧痛がある。

【腹診】

①右脇下硬がある。

②下腹部に瘀血性の抵抗圧痛がある。

③肺虚肝実証は恥骨上部から鼠径上部にかけて圧痛、抵抗がある。

【背診】

①仙骨に硬結がある。

 

[3]脈診

①脾虚肝実証は沈、細、濇、実。

②肺虚肝実証は沈、弦、実。

3,治療

[1]標治法の治療穴

①飛揚、跗陽で足を温める。

②三陰交または足三里に灸頭鍼か透熱灸。

③肝虚寒証には関元、石門、気海に透熱灸。

④肝実証には腹部硬結に深く単刺。

⑤肝虚熱証または肝実証は腎兪、関元兪、大腸兪、膀胱兪に灸頭鍼か透熱灸。

⑥寒熱往来は陽輔、絶骨、丘墟、足臨泣、帯脈、期門、日月などを用いる。

⑦冷えのぼせは百会、天柱、風池、陽輔、足臨泣、三陰交、血海を用いる。