半身不随

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①半身麻痺、硬直して動きにくいー肝虚証か腎虚証。

②半身が弛緩して動きにくいー脾虚証。

③麻痺の部分に痛みやしびれがあるー肝虚肺熱証。

④振るえて歩きにくいー腎虚心熱証。

⑤動作が緩慢ー肝虚心肺熱証。

【随伴症状】

①言語障害があると難治。

②認知症があると難治。

②弛緩して全身に冷えがあり元気がない場合は脾虚寒証。

[2]望診と聞診

①顔に表情がない場合は難治。

②舌が赤くなっている場合は陰虚熱。

③顔の光沢が強い場合は腎虚熱証。

④麻痺がなく振るえがあり動作が緩慢な場合はパーキンソン病の疑いがある。

2,証の決定

肝虚熱証

[1]病証

①イライラして怒りっぽい。

②不眠。

③便秘。

④食欲旺盛。

⑤筋の拘攣や麻痺、痛みがあることが多い。

⑥振るえて動作が緩慢なときがある。

 

[2]切診

【切経】

①胃経、大腸経、肺経、胆経に圧痛が出やすい。

【腹診】

①左右の腹直筋が緊張していることが多い。

②主に左側が引きつり臍傍に動悸がある。

【背診】

①肩甲骨内側から膈兪周辺まで凝りがある。

 

[3]脈診

①弦、大、遅が多い。弦が強ければ虚熱が多い。

②重按で左関上と尺中が虚。

③麻痺で脈が弱くなっている場合は脈診不可。

腎虚熱証

[1]病証

①足が冷えるか煩熱する。

②小便が多い、もしくは少ない。

③夜間排尿。

④口渇。

⑤のぼせ。

⑥腰痛。

⑦食欲旺盛。

⑧脚弱で歩行困難。

⑨腎虚熱証から心熱になると言語障害が現れる。

⑩熱が多いと認知症になりやすい。

 

[2]切診

【切経】

①圧痛硬結のある経絡を確認する。

【腹診】

①少腹不仁がある。

【背診】

①腎兪周辺が硬くなっている。

 

[3]脈診

①全体に浮、弦、または浮、滑。あるいは沈、弦、または沈、滑などの脈が多い。

②痰が多いと滑脈になる。

③重按で左尺中虚。

④降圧剤を服用している場合は弱脈や軟脈になっていて脈診不可。

脾虚寒証

[1]病証

①筋の弛緩が主で手足が冷える。

②麻痺部分が冷えて痛む。

③元気がなく食欲がない。

④下痢しやすい。

⑤小便が気持ちよく出ない。

 

[2]切診

【切経】

①脾経、膀胱経、胆経に虚痛がある。

【腹診】

①全体に軟弱、わずかに腹直筋の引きつりがある。もしくは中脘に抵抗がある。

【背診】

①背部全体に力がない。

 

[3]脈診

①全体に沈、遅、弱。

②左寸口、右寸口、右関上が虚。

3,治療

[1]標治法の治療穴

①中風七穴の百会、曲鬢、肩髎、曲池、風市、足三里、懸鐘に置鍼。

②絶骨、風池、大椎、肩井、間使、環跳等を併用。

③麻痺や痛みがある部位に補瀉。

④発作直後は手足井穴に刺絡。