肩凝り・寝違え

1,診察

[1]主訴の問診と随伴症状

【主訴の状態】

①頸の前が凝るー陽明経。

②項が凝るー太陽経、督脈。

③頸の横が凝るー少陽経。

④胸が凝るー肺経、心包経、脾経、陽明経。

⑤肩が凝るーすべての証にある。

⑥肩が重いー脾虚証が多い。

⑦頸の痛みや引きつりー太陽経か少陽経。

⑧頸の付け根が凝るー太陽経、督脈。

⑨首が前後左右に動かしにくいーすべての証にある。

⑩項の少し外側の凝りー胆経。

⑪肩上部の凝りー脾虚で小腸経。

⑫肩甲骨内側の凝りー少陽経。

【随伴症状】

①自発痛の場合は瀉法不可

②運動障害があれば肝虚証が多い。

③寝違えの痙攣様の痛みは肝虚証。

④吐き気があれば脾虚証が多い。

⑤血圧が高い場合は肝虚熱証か腎虚熱証。

2,証の決定

肝虚証

[1]病証

①熱証の肩こりは筋が張っていることが多い。

②肝経の熱が督脈や太陽経に波及していれば、項の引きつりや背部の凝りがある。

③陽明経に熱が入ると胸鎖乳突筋や胸が凝る。

④大腸経や肺経に波及していると咳をしていることがある。

⑤寒証の凝りは薄く腱が張っている。

⑥寒証は血虚があるから手のしびれや冷えがある。

⑦産後の肩こりは肝虚が多い。

 

[2]切診

【切経】

①肩甲骨内縁と頸の少陽経の部分が凝る。

【腹診】

①熱証は胸に熱がある。

②熱証は左脇下硬がある。

③寒証は上腹部全体が薄く緊張しており、回盲部に圧痛がある。

【背診】

①風池、完骨から肩にかけて筋張ったコリがある。

②肩甲骨内側に凝りがある。

 

[3]脈診

①熱証の脈は強く浮いているが、按圧すると虚している。

②寒証の脈は細い。

③左関上と尺中が重按で虚している。

肝実証

[1]病証

①筋肉の凝りが硬い

②肩甲骨内側から頸にかけての凝りが強い。

③脾虚肝実証では胃潰瘍の既往歴があることがある。

④慢性肝炎、肝硬変の凝りは脾虚肝実証である。

⑤中年の肥満した女性の凝りは肺虚肝実証が多い。

⑥腫瘍または腫瘍の手術後の凝りは肺虚肝実証が多い。

 

[2]切診

【切経】

①曲泉から上の肝経に圧痛がある。

【腹診】

①右脇下硬がある。

②下腹部に瘀血性の抵抗圧痛がある。

③鼠経上部や恥骨上部に圧痛がある。

【背診】

①肩甲骨内側から頸にかけて凝っている。

 

[3]脈診

①脾虚肝実証は全体に沈、細で左関上が実。

②肺虚肝実証は左尺中が虚、左関上が沈、弦、実。

肺虚証

[1]病証

①熱証の肩こりは肺虚体質者に多い。

②項が凝る。

③気に過敏。

④発汗で体調がよくなる。

⑤寒証は凝りを感じていないことがある。

 

[2]切診

【切経】

①表面的な凝りで知覚過敏の傾向がある。

【腹診】

①肺虚証は腹診を参考にしない。

【背診】

①熱証は項が凝る。

 

[3]脈診

①熱証は浮いて大きく力がある。

②寒証は浮いていても力がないか、沈んで細く弱い。

③重按で右寸口と関上が虚。

腎虚証

[1]病証

①熱証の凝りはのぼせによるもので顔が赤く光沢がある。

②高血圧症、糖尿病、心臓病からの凝りが多い。

③膀胱経に影響して項が凝る。

④甲状腺疾患がある場合が多い。

 

[2]切診

【切経】

①肺経と腎経に圧痛があるが、寒証は腎経の圧痛が少ない。

②熱証の場合は下腿部の腎経や然谷に圧痛が出る。

【腹診】

①熱証は少腹不仁。

②寒証は下腹部全体が軟弱。

【背診】

①腎兪周辺が硬い。

 

[3]脈診

①左尺中と右寸口が虚。

②寒証は軟脈。

3,治療

[1]本治法補助穴

【胸腹部】

①中府、気舎、周栄、天地、気戸、期門、天枢、石関、関元の硬結、圧痛に置鍼。

【背部】

①大杼、附分、膏肓、膀胱兪、小腸兪、魄戸など。

[2]標治法の治療穴

【陽経】

①胆経:風市、外丘、陽輔。

②小腸経:少沢、前谷、後谿。

③三焦経:支溝。

④胃経:三里。

⑤大腸経:衝陽、二間、合谷、曲池、臂臑。

⑥膀胱経:京骨、崑崙。

異常の経穴を虚実寒熱に応じて使い分ける。