アトピー性皮膚炎

1,証の決定

肝虚熱証

[1]病証

①肝虚熱証から肺熱になっているアトピー性皮膚炎は慢性のものが多い。その場合はステロイド剤の副作用のために皮膚が黒くなり角化している。

②夜も眠れないほど痒く、精神的にもうつ傾向にある。

③手掌角化症になりやすい。

 

[2]切診

【切経】

①肝経、胆経、肺経に圧痛がある。

【腹診】

①胸に熱があり腹直筋が全体的に緊張している。

②鼠径上部や恥骨上部に抵抗、圧痛が見られる。

【背診】

①腎兪周辺が硬い。

 

[3]脈診

①服用している薬の関係もあり脈は弱いことが多い。

②沈、細、虚であることが多い。

③肺熱のため右寸口の脈だけは強い。

脾虚熱証

[1]病証

①小児のアトピー性皮膚炎の軽いものに多い。

②肌肉全体が軟弱で正常な部分の皮膚もあれている。

③化膿性皮膚炎の重症になると悪寒、発熱することがある。これはその部に熱が集中し、他の部分の陽気が不足するために生じる。またその部分に停滞する熱が多いと発熱する。

④化膿している部位の熱感や自発痛がある。

⑤胃腸が丈夫ではないのに食べ過ぎている例が多い。

 

[2]切診

【切経】

①脾経と熱があると思われる経絡を切経する。

②化膿性皮膚炎は陽明経に圧痛が多い。

【腹診】

①皮膚病は表の病気のため腹証は重視しないが、体質を確認するために腹診する。

②脾虚であれば左右の腹直筋が緊張している。

【背診】

①肌荒れが確認できる。

 

[3]脈診

陽明経の脈が浮いていることが多い。

肺虚肝実証

[1]病証

①生まれたころからアトピー性皮膚炎がある場合は肺虚肝実証である。

②食欲はあるが、小児の場合は偏食である。

③大人の場合は手掌から汗が出やすく、足は脂足である。

 

[2]切診

【切経】

①圧痛がある経絡が少ない。

【腹診】

①鼠径上部、恥骨上部に圧痛、抵抗がある。

②腹直筋が全体的に緊張している。

③胸に熱感がある。

【背診】

①腎兪周辺が硬い。

 

[3]脈診

①全体的に細くやや緊張しているか、沈で弦。

②重按すると左関上実、左尺中虚。

2,治療

[1]本治法の治療穴

①難経六九難を基に取穴する。

[2]標治法の治療穴

①湿疹部位に皮膚鍼。

②湿疹部位が黒くなっている場合は刺絡。

③分泌物が多い場合は陽明経の瀉法。

④ステロイド剤服用で腎虚になっている場合は腎兪灸頭鍼。